中高年の味方、フカヒレ料理
中国料理のメニューの中で高価なものといえば、フカヒレの姿煮。フカの本名はサメで、『古事記』の因幡の白うさぎに登場するワニはサメのことだと伝えられていて、山陰や北陸地方では古語のワニとも呼んでいます。フカヒレは中国名で魚翅と呼び、アオザメ、ヨシキリザメ、モンカザメなどのヒレを乾燥したもの。日本では昔からナマコの乾燥品と並んで中国や台湾などに出荷されています。特に宮城県の気仙沼は製造が盛んで、地元にいくとフカヒレのすしや天ぷらなどもあり、私はそのメニューの豊富なことに驚きました。
ヒレは姿のままの名称を鮑翅、全翅、排翅などと呼びます。乾燥したものをもどして繊維をばらばらにほぐしたそのまま、またはまとめなおして乾燥したものが市販されています。もどし方を取材したことがありますが、その手間と時間のかかることに気が遠くなるようでした。いずれにしてもフカヒレは良質タンパク質のコラーゲンやエラスチンのほか、軟骨、骨、心弁膜、骨格筋を骨に結びつける組織の腱や眼の角膜を強くするコンドロイチンが含まれるため、最近は足や腰の痛みを気にする年代に人気があります。
私は筋が太くて長い背ビレのごりごりした歯ざわりが好きですが、日本では形の整った尾ビレが好まれると聞きます。最近、経済成長の目覚ましい中国でフカヒレの需要が高まり、価格も高騰していますから、栄養成分がしっかり溶け込んでいるとろりとした汁まで、残さずに召し上がってください。
| 東京書籍 (著:岸 朝子/選) 「東京五つ星の中国料理」 JLogosID : 14071187 |