香港と台湾の中国料理
中国料理は香港や台湾などでも食べられますね。戦後、中国本土への旅はむつかしかったのですが、香港・台湾のグルメツアーは昭和40年ごろから多く企画され、私も3回ほど参加したし、香港にはツアーでなくともたびたび出かけました。
中国に返還されるまで100年あまりイギリスの統治下にあった香港は、東洋と西洋の接点として西欧文化のほかベトナム、タイなどの影響を受けた料理も多く、中国本土とはひと味違う料理店が多く見られます。バラエティーにとんだ飲茶は、店内をぐるりぐるりと巡る手押しの台に積まれた料理をあれこれ選んで食べる楽しみがあります。
台湾は蒋介石が政府を移したときに多くの名料理人を連れてきたので、当時は中国料理を食べにいくなら台湾にといった風潮でした。昔からつきあいの多い福建のほか広東、北京、四川、浙江、湖南各地の料理、定住地を持たず中国本土の各地を常に移動して暮らしていた客家人たちの独特の料理、薬膳料理や精進料理の店もあって、現在でもグルメの殿堂と呼ばれています。私も平成19年に30年ぶりに台湾を訪れ、その美味を堪能しました。もち米に豚肉やしいたけ、塩卵などを加えて笹の葉で包んで蒸したちまきや広東粥など中国全土の名物料理が食べられたほか、しじみのにんにくじょうゆ漬け、切り干し大根入りの大きな卵焼き、いかのすり身の揚げボールなど、独特の台湾料理(台菜)も楽しみ、台湾に住む人たちの心温まる優しさに感激しました。製造過程を見学したカラスミは、お土産として持ち帰り、たいへん喜ばれました。
| 東京書籍 (著:岸 朝子/選) 「東京五つ星の中国料理」 JLogosID : 14071186 |