【旬のうまい魚を知る本】 >
▼見てくれの悪い魚ほど美味である

ぼくは漁師料理の取材で全国の浜を四六時中ほっつき歩いている。そんな旅で得た持論の一つが「見てくれの悪い魚ほど美味である」。アンコウしかり、オコゼやオニカサゴはもちろんである。宮城県の浜でボッケと呼ばれるケムシカジカも、この仲間にはいると思っている。ケムシカジカ。どうです、名前からして怪異ではありませんか。
不敵な面構えである。頭はつぶれているかのように扁平で、頭や口のまわりにはヒゲのようなものが生えている。金ノコギリのような歯が上下それぞれに2列ずつ、さらに舌の上にも歯らしきものが見える。全身はまだら模様の皮に覆われ、それががぶよぶよとたるんでいるのだから気色悪い。この怪魚がいい味なのだ。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070519 |