【旬のうまい魚を知る本】 >
▼ハタハタの傑作料理、胃袋の塩辛

ハタハタは身ばなれがよく、淡泊なために食べ飽きることがない。煮ても焼いてもうまく、「ハタハタは一度に10尾も食べなければ満足しない」と秋田の人はよくいう。それゆえ秋田では数々のハタハタ料理が食卓に並ぶ。味噌田楽はサンショウの実を炒り、それに味噌とみりんを混ぜ合わせて、焼いたハタハタに塗りつけたもの。味噌の香ばしさとハタハタの軽い味わいがよく合う。ショッツル鍋はコンブだしの汁にショッツルを加え、ハタハタ、長ネギ、シメジ、エノキ、豆腐、糸コンニャクなどを煮る鍋料理。野菜類をあまり入れないで、なるべくハタハタの味を楽しむのが秋田流だ。左党の大好物はハタハタの胃袋の塩辛。数ある塩辛のなかでも、これの右に出る傑作はきわめて少ないと私は思っている。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070287 |