【旬のうまい魚を知る本】 >
▼脇野沢村から江戸まで「新鱈」が運ばれていた

脇野沢村(青森県)は下北半島にあって津軽海峡に面する。ここで漁獲されるマダラは、古くから質のよいことで知られる。江戸時代には遠く江戸市場まで「新鱈」として運ばれていた。新鱈とは腹を割かずに、口からエラと内臓を取り出し、塩を腹の中に詰め込んだ塩蔵品のこと。腹を切らないから切腹をイメージしない。そのため武家の多い江戸市中の年越しや松の内、初午の祝膳に欠かせなかったらしい。新鱈の商品価値は江戸の初午までと期限付きだったため、回船問屋が先を争って江戸に向かい、一航海で600両もの利益を得たという記録さえある。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070307 |