【旬のうまい魚を知る本】 >
▼回遊性のアジか、瀬付きのアジか

マアジにも二つのグループがあって、味に大きな差のあることは案外知られていない。多くのマアジは水温16~17度の海域を追いかけながら大群で回遊している。この回遊性マアジは旋網や定置網などで大量に水揚げされ、スーパーで見かけるのはほとんどがこのタイプだ。ほっそりした体形は、回遊性のため速く泳ぐのに適している。全体に黒っぽいことからクロアジとも呼ばれる。
もう一つのグループは、回遊しないで浅瀬に生息しているマアジだ。回遊性にくらべて、体形が平べったく、ずんぐりとしている。背や尾の付近が黄色みを帯び、黒みがうすいことから黄アジ、または瀬付きアジとも、根付きアジとも呼ばれる。
黄アジももともとは回遊性のマアジであったろう。エサが豊かで快適な浅瀬を見つけてなまけぐせをつけてしまい、何代もそこに居着いてしまったにちがいない。エサに困ることなく、速く泳ぐ必要もないから、脂がほどよくのってくる。その結果黒アジよりもずっとグルメ好みの味に育つ。浅瀬に生息しているうえに大きな群れを作らないから、旋網や定置網で漁獲されることは少ない。1尾ずつ釣り上げられるのだから絶対量は少なく、当然のごとく高価になる。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070149 |