リング
【りんぐ】
四角いのに、なぜ「リング」?
プロボクシングをはじめ、プロレス、PRIDEといった格闘技がおこなわれる「リング」は、通常四角い。英語では「輪」という意味だから、相撲の土俵のようにスペースが丸ければ納得の呼び名だが、四角い囲いをつくっておきながら、リングとはちょっと不自然だ。しかし、格闘技の歴史をたどっていくと、リングの呼称が由緒正しいものであることがわかる。格闘技は、古代オリンピックの頃からおこなわれてきたスポーツだったが、やがて見世物、興行として広場などで開かれるようになる。人が殴り合い、どちらが勝つかを賭けの対象にしたのである。それが統一したルールを持つ近代スポーツとして形が整うのは一八世紀になってからのことだ。イギリスでフェンシングの選手だったジェームス・フィッグが、素手で殴り合うスポーツとして「ボクシングアカデミー」を設立したのが、そのはじまりだ。そのときは、試合場には何の設備もなく、ただ地面に円を描いて、そのなかだけで闘うことを条件とした。このときから、試合するスペースを「リング」と呼ぶようになった。やがてボクシングの見物客が増えると、見やすいように試合スペースが一段高いところに設けられるようになる。フィッグの弟子のジャック・ブロートンは、選手が台から落ちるのを避けるために周囲にロープを張りめぐらすことを思いつく。しかし、円形にロープを張ろうとすると支柱の数を多くしなければならない。四角なら四隅に一本ずつ立てればすむ。その結果、四角い試合スペースになった。四角とはなったが、その後、「リング」という呼び名だけは使われ続けることになったというわけだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820953 |