山片蟠桃
【やまがたばんとう】
一九世紀初頭、地球外生命について言及していた「番頭さん」
現在でも人類が必死にその存在を確認しようとしている宇宙人、つまり地球外生命。ロケットや無人探査機が打ち上げられる現代にあってもなお、その答えは得られていないが、古代からピタゴラスをはじめとする学者たちのなかには、宇宙人はいると信じて疑わない人たちは少なからずいた。そして、こうした考えは、日本人の学者、それも江戸時代の学者にとっても例外ではなかったようである。江戸後期の大坂。大名貸である升屋の番頭だった山片芳秀(長谷川久兵衛、升屋小右衛門とも名乗る)は、商人であると同時に学者でもあった。儒学と天文学を修め、山片蟠桃というペンネームで『夢之代』を著している。このペンネームは、番頭という職業の音をそのままに「蟠桃」と名乗ったとされている。「蟠桃」は中国の書物に出てくる不老長寿の果実だとか。著書『夢之代』のなかで彼は、地球外生命について言及している。「太陽ハ天地ノ主ナリ。地は主ナラズ」と地動説に基づいた新宇宙論を提唱。現在の太陽系に近い惑星系をあらわし、火星、木星、土星とそれらの衛星には人間が住んでいるに違いないとした。同著では地動説を支持しているほか、神代史を否定し、無神(無鬼)論を展開するなど、江戸の封建制下にあって極めて実理的で合理的な持論を展開している。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820920 |