八重干瀬
【やびじ】
一年に二、三回しか姿を現さない「幻の島」
姿を見せるのは一年に二、三日だけという幻の島がある。八重干瀬(やびじ)といわれる珊瑚礁群で、沖縄県宮古諸島の池間島の北、五から一六キロ付近に広がる辺りである。満ち干きで出現するというくらいなのだから、小さい島かと思うと、東西に約八キロ、南北に約一二キロ、周囲は約二五キロもあって、プロ野球のキャンプなどで有名な宮古島と同じくらいの面積があるという。八重干瀬が日本では最も大きい珊瑚礁の島なのだ。日々の満ち干きでは出てこないのだが、一年に二、三日というその時期、いったい何が起こっているのだろうか。正式には答えが出ていないのだが、例年、春先に限り、気圧の関係で八重干瀬周辺の海域では干潮が激しく起こるときがある。とくに、旧暦の三月三日頃(太陽暦では四月中頃)が、その海面が低くなる大潮の日に当たるそうだ。大潮は、月と太陽が一直線に並び、潮の干満を起こす月の引力に加えて、太陽の引力が加わることで起こる。その影響で大きな干き潮が起こり、島があらわれるのだ。この珊瑚礁群の出現は、気圧の変化と大潮が起こす神秘的でロマンティックな現象である。最近では、予測もしやすくなっているので、ツアーなども組まれており、船からこの美しい珊瑚の島に足を踏み入れることもできるという。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820917 |