茶柱
【ちゃばしら】
「茶柱が立つと縁起がいい」という俗信は、駿河の茶商人から
「茶柱が立つと縁起がいい」、「立った茶柱を人に見られる前に飲み干すと何かいいことがある」とは、よく耳にする言い伝えである。ではなぜ「茶柱が立つと縁起がいい」のだろうか。実はこれ、お茶の産地、静岡の商人が考え出したセールス・コピーであったという。周知のように、お茶は最初に摘み取った一番茶がいちばんおいしい。そのため、茎の入っている二番茶は売れ残ってしまうことがよくあった。そこで、どうすれば二番茶を売ることができるかと考えた末に生まれたのが、冒頭のフレーズだった。茶商人がこの名文句を触れ回ったので、人々の脳裏に焼きつき、言い伝えられるようになったらしい。また別の説もある。お茶を入れるとき、なかの茶葉などが入らないように、急須にはたいてい網が張ってある。にもかかわらず、その隙間をぬって短いお茶の茎が茶碗に紛れ込んでくるのは非常にめずらしい。しかも水平ではなく垂直に立つ。これは、二つの偶然が重ならなければ起こりえない。だから「茶柱が立つと縁起がいい」となったというのである。乾燥した茎には穴がたくさん空いている。その穴に湯が吸いこまれる具合で、立って浮くという現象が起こるわけだが、ここまでの時間はお茶によって様々だ。お湯をすっかり吸った茶柱は茶碗の底に沈んでいくので、ちょうど飲むときに茎がほどよくお湯を吸って立つというタイミングは非常に確率が低いということになる。これをプラスの予兆として、すなわち縁起がいいこととして受け止めたのである。また、家の柱が立つイメージや男性のシンボルから連想されたという説もあるらしい。しかし最近では、手軽なティーバッグを利用したり、ペットボトルのお茶も売られるようになった。お茶に茎が混じって売られることも少なくなったようだ。茶柱を見ることも、いよいよまれになったといえるだろう。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820551 |