太極拳
【たいきょくけん】
速く動くためにゆっくり動くという逆説
太極拳というと、あのゆっくりした動きが特徴。ヨガと同じような「中国の健康法でしょ」と思っている人も少なくないだろうが、れっきとした武術なのである。でも、あんな優雅な動き方では相手に倒されてしまうのでは? と思うが、ゆっくり動きながらワザを修練することによって、速く動けるようにするという訓練法なのである。ダンスなどを習う場合でも、まずはゆっくりとしたテンポからはじめ、だんだんとテンポを上げていくという練習方法が有効である。その考え方が太極拳の極意といえ、体得度を着実に上げるために、じっくりかつ正確に、柔らかく動くことが重要なのである。その動きが、健康によいイメージをつくり出して、健康法のように勘違いされているというわけだ。もっとも、単に体を動かすのではなく、深い呼吸を大きくしながら動作に合わせていくことで、血の循環がよくなり新陳代謝が活発になるといわれているから、健康法ととらえても、あながち誤りとはいえない。中国でもこの健康効果が話題になり、広く取り上げられるようになって全土に広まっていったようだ。それが、さらに日本だけでなく、世界中にも広まっている。では、太極拳の動きをマスターしたら、速く激しくやってもいいのかというと、それは違うようだ。もともとあのゆっくりとした動きがやはり太極拳独特のものであり、速い動きの拳法をやりたい人には、空手の源流でもある南拳や、少林寺拳法の源流である長拳などをやるといいそうだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820508 |