サン=テグジュペリ
【さんてぐじゅぺり】
飛ぶことは大好きだったが、実は操縦が下手で事故の連続
フランスの作家であり飛行家のサン=テグジュペリは、一九二二年に空軍パイロット資格を取得。一九二六年、ラテコエール航空会社に入社し、定期郵便飛行に従事する。その経験を活かして執筆した『夜間飛行』は、一九三一年にフェミナ賞を受賞しベストセラーとなった。一九四〇年、フランスへのドイツ軍侵入により彼はアメリカへ亡命。亡命中の一九四三年春に、挿し絵も自分で描いた哲学的な童話の名作『星の王子さま』が出版された。彼は作家としての成功後も、生涯飛行家を続けた。「飛行機に乗るのと文学作品を書くのとどちらが重要か」と質問されたとき、「わたしにとって、飛ぶことと書くことはまったく一つなのです」と答えたという。小説の執筆と同じぐらい空を飛ぶのが大好きで、空を駆けめぐりながらすばらしい作品を創造したサン=テグジュペリだが、実は、パイロットとしてはあまり優秀ではなかったらしい。彼が航空会社に入社したとき、面接をした営業主任のディディエ・ドーラは、「パイロットという職業に対する適性がこの男にあるかどうか、きわめて疑わしいと思って心配しました」(稲垣直樹著『サン=デグジュペリ』清水書院)という。なんとかテストに合格して同社に入社し、同社退職後は、『夜間飛行』の印税で自分の飛行機を買ったが、最初の機は砂漠で大破して、自身も危うく死にかけた。懲りずに貯金をはたき、借金までして買った二機目は、わずか一年半後、中米グアテマラで離陸に失敗してスクラップになり、またもや死にかけた。気圧の低い高所では、通常、機体を軽くするために燃料を満タンにはしないのだが、彼は補助タンクにまで燃料を満タンにして離陸しようとしたため、機体が重くて飛び上がれなかったのだという。気持ちのうえでは書くことと飛ぶことが同じでも、どうやら才能は同じではなかったようである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820366 |