几帳面
【きちょうめん】
「几帳」の面は、どんな面?
「几帳」は、平安時代あたりに盛んに使われたもので、上流家庭で使う衝立の一種。台に二本の柱を立て、その上に横木を渡し布を垂らしたもので、間仕切りにしたり、風除け、目隠し用に使ったもので、その時代の貴婦人が自分の座る側に立てて、直接、外から姿を見られないようにした。高級品の仕上げなので、几帳の柱は真四角ではなく、角のところにわずかに鉋をあてて丸みを出しているのが一般的だった。この鉋で削った部分のことを「面」といったのである。しかも、普通の柱であれば単に角を削るだけなのだが、几帳の場合、もっと優美なつくりなので、「撫角」といって、角を丁寧に丸くして半円形の「段・きだ」を入れた。これが「几帳面」である。細かな細工で少しでも曲がっているとうまくできない。そういうところから、入念細心の注意を払ってやることを「几帳面のようにやる」というようになったという。当初、貴族社会で用いられていた言葉なので、それほど流布しなかったが、江戸前期になり、商家などでよく使われるようになったともいわれる。それというのも、商人の家には、いくつもの帳簿がある。細かな作業で、びっしりと帳面を付ける生真面目な番頭や手代の振る舞いを、「生真面目」と「帳面」を合わせて、「生帳面」というようになったというのだ。そもそもは大工や指物師し、職人の用語だったのだろうが、江戸商人の言葉として次第に広まっていき、「几帳面」という言葉が、「物事のすみずみまで気を配って、厳密に規則正しくやること」をいうようになったのであろう。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820216 |