岐阜
【ぎふ】
実は、文王と孔子にその名の由来が!
海に囲まれた日本のなかで、海に面してしない数少ない県の一つが、中部地方にある岐阜県だ。「岐阜」というその名は、一説によると、戦国武将の織田信長の命名によるという。義父である斎藤道三が、息子の義龍に討たれると、敵討ちを大義として信長は美濃に攻め入り、義龍を討って自分の領地とした。その後、約九年間を信長は岐阜城で過ごした。当時の岐阜は、「井ノ口」と呼ばれていたが、信長は新しい地名にしたいと、禅僧の沢彦に相談する。このとき、沢彦が提案したのが「岐山」「岐陽」「岐阜」の三つだった。そのなかから、信長が選んだのが「岐阜」だったという。「岐阜」の「岐」の字は、中国の「岐山」にちなんだもの。「岐山」は中国古代の周の文王が立ったところで、八〇〇年の太平の世が続いたことから、「太平の地」といったイメージを持つ。「岐阜」の「阜」は、中国の「曲阜」にちなんだもの。曲阜は、孔子の生まれた土地であり、そのため「学問の地」といったイメージがある。このことから、「岐阜」には、太平と学問に適した土地といった、高い理想の意味が込められている。もっとも、この信長命名説はあくまで説であって、確かな根拠はない。一説には、信長が命名する以前から「岐阜」という名で呼ばれていたともいわれている。ちなみに、「岐阜」のように、地名の由来が中国にある県名は、ほかにはない。そういえば、戦国時代に「美濃を制するものは天下を制す」といわれた。信長にとっても、のどから手が出るほど欲しかった土地だったから、その名に負けない、素晴らしい土地だったといえそうだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820219 |