カルパッチョ
【かるぱっちょ】
画家の名前から名づけられたイタリア料理の前菜
おいしそうな生肉やマグロの上に種々の香草をのせ、マヨネーズとマスタードを混ぜたソースやオリーブオイル、パルメザンチーズをかけたイタリアン料理の定番前菜、カルパッチョ。いまではファミリーレストランやパスタ料理の店では、日本人にもかなり親しまれているサイドメニューだ。このカルパッチョ、実は料理としてはそんなに古いものではない。生まれたのは一九五〇年、常連の伯爵夫人のために、ヴェネツィアのハーリーズ・バーという店のオーナーがつくったスペシャルオーダーの「ダイエット食」だった。このとき、伯爵夫人は、医者から厳しい食事制限を設けられており、そのためオーナーは、北イタリアの伝統料理であるカルネ・クルーダをアレンジして、牛のひれ肉を薄く切り、マヨネーズとマスタードを混ぜたホワイトソースを、たっぷりではなく、細く網の目状にかけた料理をつくった。この料理は夫人に喜ばれ、料理名を問われたときに、オーナーがルネサンス期の画家ヴィットーレ・カルパッチョの名前を取って、「ビーフ・カルパッチョです」と答えたのがはじまりだという。なぜ画家カルパッチョだったかというと、ルネサンス期のヴェネツィア生まれの画家で、おもに宗教画を描き、聖母や聖人伝の連作を手がけていて、その作風として赤と白の色使いが特徴だったから。赤を薄切りのビーフ、白をマヨネーズソースに見立てたのである。その後、この料理が広まっていくにつれて、肉と相性がいいので、マヨネーズのソースに替えてパルメザンチーズをかけたり、オリーブオイルをかけたり、食材も肉ではなくてマグロにしたりとバリエーションが増えていったのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820192 |