カツオ
【かつお】
泳ぎ続けないと死んでしまうという回遊魚の謎
俳優キアヌ・リーブスの出世作となった映画『スピード』は、テロリストによってバスに爆弾が仕掛けられてしまい、そのバスは時速五〇マイル(八〇キロ)以下になると爆発するというストーリーだった。そのため、とにかくバスを時速五〇マイル以上で走らせ続けなければならなかった。「走り続けなければ死んでしまう」という、その切迫感が映画の醍醐味だったのだが、この映画を現実の生活で体験しているのが、回遊魚のカツオやマグロだ。カツオは口から水を吸い込み、水中に溶けている酸素を取り入れることで呼吸している。とはいえ、水中の酸素は少量だから、とにかく絶えず新鮮な水を体内に取り入れなければならない。その役割が、ある程度のスピードを出して泳ぐということ。口をあけて泳げば、自然と水が次から次へと口に入ってくるというしくみだ。しかし、スピードを緩めてしまうと、口へと流れる水の流れもおだやかになり、新鮮な水は少ししか口に入らない。そのためカツオは、呼吸するために、いい換えれば生きるために、ある程度の速さで泳ぎ続けなければならないのだ。また、カツオやマグロは、ほかの魚に比べて体の比重が重いために、止まっていると海の底に沈んでしまう。沈まないためには、これまた泳ぎ続けるしかないのである。だから、カツオは寝ていても泳ぐことはやめない。ところが、実際には、カツオだって熟睡してしまうこともあるようで、数秒間、泳ぐのをやめて体を横にすることがある。すると、体は当然ながら沈み出す。そこで、慌てたように、カツオはすぐにまた泳ぎ出す。その姿は、まるで私たちが、うとうとしかけて、これではいけないとビクっと起きる、そんな様子に似ている。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820167 |