アンデルセン
【あんでるせん】
世界一モテない男?フラレっぱなしの文豪
『人魚姫』『赤い靴』『雪の女王』『はだかの王様』『みにくいあひるの子』などの童話で知られるハンス・クリスチャン・アンデルセンは、コペンハーゲンに出て役者をめざしているとき、篤志家の目にとまって学業を修め、詩作に親しみ、少しずつ作品を発表するようになった。彼の名が世に出たのは、イタリア旅行の印象を綴った『即興詩人』だったが、続いて発表した童話集は不評だった。おとぎ話はしょせん子ども向けで、文学的価値がないというのだ。しかし、第二集、第三集と続けるうち、やがて昔話とは違うその新しさや独創性に、作品的価値が認められていく。故郷では名誉市民となり、生前に作品が一五カ国語に翻訳され、葬儀に際しては国中が喪に服したというデンマークが誇る作家である。彼の童話のなかでもよく親しまれている『みにくいあひるの子』は、まるで彼自身の物語のようでもある。何しろハンスは、恋しても恋しても、女性にフラレ続け、生涯を独身で終えたからである。その意味では、みにくいあひるの子は、ついに白鳥になることなく終わったことになる。ハンスが最初に愛したのは、ラテン語学校の同級生の姉だが、人より遅れての入学だったから、姉とはいえ彼女は一歳年下、ハンス二五歳のときのことだ。ただ彼女にはすでに婚約者がおり、この恋は初恋の定石通り実らなかった。二人目の恋の相手は彼を進学させてくれた恩人の娘、三人目は恩師の娘と恋は続くが、どちらも身分の違いや財産のなさにためらっているうち、彼女たちはほかの男性と結婚したため、気持ちを伝える前に終わってしまうありさまだった。四人目は、旅先で宿泊したスウェーデンの男爵令嬢。彼の作品『絵のない絵本』に登場するのと同じ名前のマチルダ・バルクだ。マチルダがハンスに送った手紙が、旅行中の彼の手に渡らなかった不運もあって、彼女はほかの男性と婚約した後、急死してしまう。そのとき、すでにハンスは最後の恋のとりことなっていたが、相手はスウェーデンの歌姫。しかしこれも、彼女には婚約者がおり、やはり失恋に終わったのだった。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820033 |