コラム
『前菜の呼び方あれこれ』
西洋料理の前菜といえば、日本ではオードブルの呼び名が一般的。これはフランス語のhors-d'oeuvre に由来する。hors =「~の外」、oeuvre =「仕事」で、イタリア語のアンティパストと同様に、主菜の前の軽い料理を指す。もう一つ、アントレ entrée =「入り口」という言葉もあり、こちらは前菜と主菜の中間のニュアンスが強い。
アミューズamuse という言葉もよく見かける。フランス語のamuser =「楽しませ」が元になっており、前菜の前に出されるつまみ、つきだしといったところだ。イタリア語ではストゥッツィキーノstuzzichino というが、アミューズという呼び方をしている店もある。
ちなみに、英語の前菜はアペタイザーappetizer。こちらは「食欲を促すもの」の意。食前酒も含めて指すことが多い。
『イタリアンではないけれど…シーザーサラダ』
なぜか日本のイタリア料理店でよく見かけるシーザーサラダCaesar salad。レタスの上に、クルトン、粉チーズ、ゆで卵などを散らし、ホワイトドレッシングもしくはビネグレットソースをかけるサラダだ。
実は、これはイタリア料理とはいえない。発祥の地はメキシコ。アメリカとの国境に近いティファナの町のホテルレストランで、1920 年代に創製されたといわれている。シーザーの名は、そのホテル名のシーザーズパレス、またはその支配人で考案者のシーザー・カーディーニ氏に由来するというのが通説。このサラダは、ハリウッドからやってきたアメリカ人たちの間で人気になり、世界に広まった。シーザー・カーディーニ氏はイタリア移民だったというから、イタリアと全く縁がないわけではないが、アメリカの料理とするのが正しいだろう。
| 東京書籍 (著:岸 朝子) 「イタリアン手帳」 JLogosID : 8541027 |