【イタリアン手帳】前菜 >
インペパータ

貝の旨みをダイレクトに味わうコショウ風味の蒸し煮

インペパータとは、コショウ風味の蒸し煮のことで、イタリア語のコショウpepe(ぺーぺ)が転じたもの。主に貝類を使う素朴な魚介料理だ。洗った貝をざっと鍋に放り込み、少量の水を加え、すぐさま蓋たをして待つことしばし。貝の口が開いたらもう食べ時。たっぷりコショウをふって、彩りにはイタリアンパセリを。好みでレモンを絞りかけて。水に白ワインを加えるところもあるが、主役はあくまでも貝そのものの風味だ。
貝はアサリやハマグリなどなんでもよいが、よく使われるのはムール貝cozze(コッツェ)。黒光りする貝の間にぷっくりと朱色の身がのぞく様がワイルドだ。食べるほうも貝を手づかみで、汁を逃さぬよう一気に味わおう。口いっぱいに広がる潮の香を、粒コショウがキリッと引き締める。海の幸のインペパーテは、Impepata di frutti di mare(インペパータ ディ フルッティ ディ マーレ)というのが一般的だ。
![]() | 東京書籍 (著:岸 朝子) 「イタリアン手帳」 JLogosID : 8541017 |