ロインそろい踏み
【ろいんそろいぶみ】
牛肉の最高級部位「ロース」の名は、英語のroast(焼く、炙るの意)から来ている。つまり、肩から腰にかけての背側の肉が、焼いたり炙ったりに向いていることからroast=ロースと呼ばれるようになった。
英語ではこの部位をloin(ロイン=腰)という。リブロースのほか、Sirloin=サーロインやTenderloin=テンダーロインがこれに当たる。この2つのロインについて、以下にエピソードを少し。
まずSirloin。たかがお肉に、ナイトの称号である「サー」が冠せられているのだから、さぁ大変。17世紀前半の英国、ジェームズ一世治下のころ。国王主催のパーティで、賓客に供された牛肉のステーキが大好評を博した。気をよくした国王は、この牛肉(当然ロインだったはず)に「汝にサーの称号を与える」と宣言して、満座の大喝采を浴びたという。遠い昔の、ちょいとしゃれたお話。
そしてTenderloin。これはヒレ、またはフィレ(filet、仏語)のこと。とにかく働かない筋肉だから、tender=やわらかい、とあるように、牛肉ではもっともやわらかい部位の一つ。18~19世紀のヨーロッパで辣腕外交官として鳴らし、ロマン派に大きな影響を与えた作家でもあったフランス貴族・シャトーブリアン。彼はヒレでも特にテンダーな芯の肉を好み、彼にちなんでこの部位がシャトーブリアンと呼ばれるようになったという。
| 東京書籍 (著:東京書籍出版編集部) 「焼肉手帳」 JLogosID : 8015004 |