【東京五つ星の肉料理】豚肉料理 > 世田谷区
とんかつ 椿
【とんかつ つばき】

二枚看板はラードだけで揚げる

昭和38年、現当主・渡辺一朗さんの父の孝さんが、当地に開業。同時に渡辺さん自身も店に入る。大きな屋敷が並ぶ閑静な高級住宅地として知られる一帯には、また映画各社の撮影所が何軒もあった。当時孝さんは、フリーの映画カメラマンととんかつ屋の二足の草鞋を履いており、そのつながりか、創業時の建物は各社の大道具さんが集まって建てたという。
客にも当然映画関係者が多く、著名な俳優や監督が足繁く出入りした。この人たちに共通しているのが、味にうるさく舌が肥えていること。「だからうちのソースは創業のときから手づくり。赤だしを出したのも東京ではずいぶん早かった」と渡辺さん。肉は長年の間に、多摩~埼玉周辺産の豚に落ち着いた。
料理は創業以来、ラードだけでしっかり、からっと揚げるヒレカツとロースカツのみ。ひと口にとんかつとはいえ、食通たちに支持されてここまで洗練されたこの二枚看板を、アンデスの塩で、また自信の手づくりソースでじっくり味わいたい。
![]() | 東京書籍 (著:岸 朝子/選) 「東京五つ星の肉料理」 JLogosID : 14070869 |