【東京五つ星の肉料理】鳥肉料理 > 千代田区
ぼたん
【ぼたん】

明治の味をそのまま今に

灯ともしごろ、軒灯のほのかな明かりを受けて玄関に入ったそのときから、時空は100年余を一瞬に飛び超えてしまうようだ。昭和4年(1929)築の建物は古寂びて温かく、籐の筵を敷き詰めた2階大広間、あるいはそれぞれに意匠を凝らした1階の小座敷で鳥すきやきをつつけば、その味もスタイルも明治30年(1897)の創業のころとさして変わらない。
丸で仕入れて、4代目当主の櫻井一雄さん自身がさばく鳥肉は新鮮そのもの。なかでも砂肝やレバーなどのモツ類は、モツを食べる習慣のなかったころから「ぼたんのモツ混じり」と賞されて、つとに評判が高かった。
真っ赤に熾った備長炭に鉄鍋をしつらえ、脂→肉→割下とお決まりの手順を踏んで煮て、やや濃いめの割下の匂いも香ばしい肉を、新鮮な溶き卵にからめてほおばる。歯切れよい胸肉、
むっちりしたもも肉。自慢のモツはさすがに後口よく、しかも体に効きそうで、なんだか寿命まで延びる気がする。
![]() | 東京書籍 (著:岸 朝子/選) 「東京五つ星の肉料理」 JLogosID : 14070828 |