【旬のうまい魚を知る本】 >
▼卵の醤油付けはイクラよりうまい

月浜のケムシカジカ料理は味噌汁以外にも多彩である。身を酢味噌で和える“ぬた”は、端麗な味わいでどれだけ食べても食べ飽きない。「イクラより数段上」と土地の漁師が断言する卵の醤油漬けもうまい。イクラよりも少し小粒だが、味に押しつけがましさがなく、食べたあと舌に残る余韻が心地よい。これを肴にすると、酒をいくらでも飲めるのがタマにキズだけど。小さなボッケはから揚げが絶妙だし、煮魚も捨てがたい。鍋では怪魚と野菜との類いまれな共演をぞんぶんに楽しめる。しかし、ケムシカジカ料理を一つ選ぶのならば、やはり味噌汁であろう。あの特有の香りと不思議な旨味は、一度食べればまず病みつきになってしまうのだ。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070523 |