▼ミルクイガイは手で砂泥をあおって獲る
ミルクイガイの取材で、愛知県日間賀(ひまが)島で民宿「はまや」を兼業している漁師の坂口政夫さんを訪ねた。「クロミルとシロミルとでは味が大きく違います。クロミルのほうが甘味が強くてうまい。浜相場もクロミルのほうがずっと高価ですよ」。坂口さんがいうクロミルはミルクイガイのこと。殻も水管も黒っぽいから、この島ではこう呼ぶ人が多い。
坂口さんはミルクイガイを素潜り漁で獲る。この貝は用心深いことはなはだしく、いつも海底の砂泥に30センチほど潜り、漁師が「目」と呼ぶ水管を砂泥地から1~3センチ出している。素潜り漁師はこの目を見つけると、ネットを場所の目印として置き、いったん海面に浮かび上がる。フロートにつかまって呼吸をととのえ、再び潜って手で砂泥を掘って獲る。
「シャベルという砂を掘る道具もあるけど、これはクロミルの目を痛めるから、私は使わない。手で掘るというより、手であおって水圧をかけ砂泥をはらっていくんですよ」
水深は浅いところで3メートル、深いところで10メートル。長年の経験を積むと、「砂っけを見れば」ミルクイガイがいるかどうかを判断できると坂口さんはキッパリ。
| 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070472 |