▼タカベを狙う新島の追込漁
タカベ漁の時期に新島へ渡ったことがある。マリーンスポーツのメッカとして知られるが、ここは漁業の島でもある。全国的にも珍しい、勇壮な追込漁が受け継がれ、それでタカベを狙う。「ずっと昔、沖縄の追込漁を導入したと聞いている。うちでは塩をふって丸のまま冷凍して、タカベ好きが一年中味わえるように宅配している」と教えてくれたのは、新島若郷漁協の北村好太郎さん。
新島若郷にある民宿「うへい」の磯部唯四さんは、追込漁に長くかかわってきたベテラン漁師。「40年以上やってきて、今は船を下りて網の修理を頼まれておる。この漁法は6月から9月までだな。アクアラングを装備した漁師数人が潜り、ガラと呼んでいる道具で音を出しながら、仕掛けておいた建網にタカベの群れを追い込んでいくんだ。以前は伊豆七島のほかの島でもやっておったようだが、今は式根島と新島の本村、それにここ若郷の三つの漁協だけになった」
若郷漁協では例年100トン前後のタカベを追込漁で漁獲している。だから、ほかではなかなか手に入りにくいタカベも、この島では気軽に味わうことができるのだ。
| 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070431 |