【旬のうまい魚を知る本】 >
▼生シラスが舌の上で踊る

シラスのほとんどはシラス干しなどの加工品として流通する。せっかく産地に出向いたのだから、生シラスを味わいたかった。漁協の人に教えられて舞阪漁港すぐそばの味処「魚あら」へ。水揚げされたばかりのたっぷりのシラスの上に、すりおろした根ショウガと少しの醤油をかけてすすりこむ。と、まるで遠州灘のエッセンスともいうべき稚魚の群が、舌の上でリズミカルに踊り、するりとのどへと滑り込んでいった。なんとも巧まざる美味である。
舞阪漁港から歩いて3分ほどの堀江三郎商店に寄った。ここのシラス干しは質がよいとかねてから耳にしていたのだ。「薄塩で天日干し、ほかの味付けは一切していません」と店の人はごく当たり前のようにいっていた。気張って500グラムを買った。帰宅してから、あたたかいご飯の上にこんもりのせて、ほんの少しの醤油をかけて味わった。繊細微妙な味については、ことさら書くまでもないだろう。たちまちご飯3杯とともに胃袋に消えていった。
舞阪町のシラス漁の最盛期は、4月中旬から11月にかけて。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070378 |