【旬のうまい魚を知る本】 >
▼アンコウは釣りの名人である

アンコウはその姿や習性からさまざまな隠語に使われる。肥満型力士をアンコ型というのは、腹の出た格好が似ているからだ。アンコウが目の前にエサが通るのをじっと待っている様子から、毎朝仕事の声がかかるのを待機している日雇い労働者をアンコウと呼ぶ。大言壮語する武士を鮟鱇武士と毒突いたのは、大口であまり動かない不精者に見えるアンコウにたとえたのであろう。
もっともアンコウが動かないのは訳がある。この魚はいつも長く伸びた背ビレ第一棘をゆらゆらとゆらしており、その先端をエサとまちがえて寄ってくる魚を大口でぱくっとやる。そのためには体を石ころに似せて、じっとしている必要があるのだ。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070233 |