【旬のうまい魚を知る本】 >
▼ジャンプの名人とおいしさの関係

ホタテガイの語源は、この貝が深いほうの殻を舟にして、平らなほうの殻を帆にして海面を走ると昔の人が信じていたためである。だから漢字で帆立貝と書く。ただし実際の移動方法はこれとは異なる。貝柱を使って殻を閉じるとき、殻の耳にある噴射口から海水を勢いよく吐き出し、その反動で前へ跳ぶのだ。一度の噴射で1~2メートルもジャンプし、一晩に500メートルも移動することがあるといわれる。ホタテガイは見た目よりも活動家なのだ。
ジャンプ好きの貝は、跳躍することで貝柱を鍛え、より強靱に、より大きく成長させていった。その恩恵に浴して、人間は至福の味をたっぷりと楽しむことができる。そう、われわれがいつもほおばっているのは、たいがいはホタテガイの貝柱の部分である。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070205 |