▼トキシラズ、メジカ、ケイジの正体
同じシロザケでも「トキシラズ(時不知)」「メジカ(目近)」「ケイジ(鮭児)」と特別に呼ばれる種類が、美味で稀少なため人気がある。なぜ、この3種類は特別なのか。トキシラズは5~6月に日本海域で漁獲される。彼らは日本生まれのサケではなく、ロシアのアムール川などを生まれ故郷にするサケが、日本海域に迷いこんでしまったものと思われる。日本生まれのサケが日本海域まで回帰したときは産卵も間近。そのため栄養分が卵に使われてしまい、身はやせている。それにくらべトキシラズは産卵までの日数が長い(イクラ〈卵〉の粒が小さいことがそれを裏付けている)。そのため栄養分が身にゆきわたり、脂がのっていて味がよいのだ。
メジカはほかのサケにくらべて目と鼻先の間隔が短いことからこう呼ばれる。このサケはほかの多くのサケと同じく産卵のため秋に回帰してくるが、産卵する25日から60日も前に漁獲される。そのためトキシラズと同様の理由で、身に脂分が多く美味なのだ。
水揚げがごくわずかなため、もっとも高価なのがケイジ。これは翌年以降に産卵する未成熟のサケ。エサを求めて沿岸に接近したときに、ほかのサケと一緒に漁獲されたもので、メジカ以上に脂肪分が多い。北海道のサケ漁師たちは、このケイジの刺身で舌鼓を打つことを好む。
| 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070175 |