【旬のうまい魚を知る本】 >
▼ウマヅラハギの薄造りは皮をつけたまま三枚に

厚い皮に覆われているため、一見すると下おろしが難しそうだが、これほど簡単な魚はほかにない。頭の後ろの棘を前に倒して背から体を折ると、頭部と一緒にハラワタを取り除くことができる。あとは指で皮をばりっと剥ぐだけだ。
ところが皮を剥いだのでは、ウマヅラハギの薄造りはできないというのが、賀茂村宇久須(うぐす)(静岡県)の漁師で民宿「大和丸」をいとなむ山本賢さん。「生きているウマヅラの頭を落として血抜きして、皮を付けたまま三枚におろす。それから薄皮を皮に残して包丁で身を引く。身に付いた薄皮はとても取り除きにくいから、こうしなければ薄造りにはとてもできないよ」。
山本さんの手によるウマヅラハギの薄造りは、半ば身が透き通ってフグの薄造りとみまがうばかり。フグと違うのは肝が添えられていることだ。その肝を溶いたポン酢をつけて薄造りを舌にのせると、二つの味がからまりあい、深遠きわまりない味でわが舌を驚かすのだ。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070169 |