【旬のうまい魚を知る本】 >
▼川が泥を運ぶからうまいアカガイが育つ

アカガイは北海道から九州までの沿岸に分布し、ことに内湾の水深10~30メートルの泥底に好んで生息する。数ある産地の中でも、閖上(ゆりあげ)(宮城県名取市)は味量ともに日本一といわれている。ここのアカガイ漁の船は約30隻。農具の鋤に似た「マンガン」を装着した網を曳きながら、船をゆっくりと走らせる桁曳(けたひきあみ)漁で漁獲する。
漁を終えた漁師に閖上産アカガイがなぜうまいかをたずると、「名取川、七北田川、北上川、広瀬川、阿武隈川の延長線上の仙台湾がアカガイの生息地。川が運んだ泥地に育つからうまいんだ」。輸入ものとくらべると、閖上産は磯の香りが強く、味も歯ごたえも格別なのだそうだ。なんでもここに来て食べた人は、アカガイとはこういう味だったのかとあらためて驚くとか。そう聞いては食べずにはいられない。閖上港前のすし屋でアカガイの刺身を注文すると、まさに漁師のいう通り。くりっとした歯応えと、なまめかしい味に仰天するばかりだった。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070004 |