桃太郎のお供
【ももたろうのおとも】
イヌ、サル、キジは、陰陽道に由来する!?
岡山県岡山市にある吉備津神社には、鬼退治の伝説がある。桃太郎のモデルとなる大和朝廷の武将、吉備津彦命の話だ。彼は鬼退治に行くわけだが、その手助けをする家来が必要だ。家来になったのは、犬飼武命という吉備の豪族であったという。この犬飼武命が、桃太郎のイヌのモデルだ。伝説によると、吉備津彦命と鬼との戦いは決着がつかず、死闘が五回も繰り返された。吉備津彦命が放つ矢はことごとく途中で打ち落とされてしまった。そこで、一度に二本の矢を放つと、一本は打ち落とされたが、もう一本が鬼神の目を貫き、血は川となったと伝えられる。ところで、そこには、キジやサルは出てこない。桃太郎のなかのキジとサルはどこから出てきたのだろうか。仁徳天皇の時代に創建された吉備津神社本殿には、吉備津彦命が祀られている。そして敗れた鬼神も、同じの本殿の片隅に小さな社に祀られている。この社が本殿の丑寅の方角にあるので「うしとらみさき」と呼ばれるが、このことから桃太郎のお供がサルとキジになったわけが説明できるという。古代から中国に伝わった「陰陽道」で、丑寅の方角、つまり東北は鬼門といわれ、悪霊の強い力が働く方向だとされている。これに対抗するための方角が、反対の裏鬼門から一つずらした申酉の方角で、これが東北の鬼門に強いとされているのだ。つまり、邪気をはらう意味で、申酉の方角からサルとキジを登場させたというわけだ。この考えで桃太郎の家来の謎解きをしたのは、『南総里見八犬伝』で有名な滝沢馬琴。自身の著作『燕石雑志』のなかで、「鬼が島は鬼門を表せり。これに逆する西の方を申、酉、戌をもってす」と記している。陰陽道によれば、自然は昼夜の循環、天と地の対立が基礎という考えに基づいており、陰が鬼のいる鬼門の東北、それに対して陽は申、酉、戌となるので、桃太郎の家来は、この三匹の動物たちになったのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820904 |