日本アルプス
【にほんあるぷす】
命名は二人の外国人だった
本州の中央部にある飛騨山脈、木曽山脈、赤石山脈を総称して「日本アルプス」と呼び、それぞれを北アルプス、中央アルプス、南アルプスと呼び慣わしている。では、誰がこれらの山々を「アルプス」と命名したかというと、それは二人のイギリス人だった。一八八一(明治一四)年、大阪造幣局の技師で地質学者でもあったウィリアム・ゴーランドが、飛騨山脈を日本アルプスという名で著書『日本案内』に記したのが最初である。その後、一八八八(明治二一)年に布教活動のために来日した宣教師ウォルター・ウェストンが、帰国後に『日本アルプスの登山と探検』を発表。この著書によって、ヨーロッパの登山家に「日本アルプス」の名が広く知られるようになった。このウェストンの功績を讃えて、毎年六月に上高地でおこなわれる山開きでは、ウェストン祭が催される。岩に埋め込まれたウェストンのレリーフの前で、参加者がウェストンを讃える歌を歌うのである。ところで、この二人のイギリス人はともに登山家で、マッターホルンなどスイス・アルプスの登山経験を持っていた。そんな二人であったからこそ、日本で登った山々にアルプスを重ね合わせて、「日本アルプス」と呼んだのだ。ウェストンの『日本アルプスの登山と探検』には、こんな山の描写がある。「日本のマッターホルンともいうべき槍ヶ岳や、ペニン・アルプスの女王ワイスホルンを小さくしたような優美な三角形の常念岳、それからはるか南方にどっしりとした乗鞍岳の双子峰。それぞれ特徴のある山の姿が私の目にやきついた」(『日本アルプスの登山と探検』青木枝朗訳、岩波文庫)。世界中の登山家になじみのある「アルプス」の名がついたことで、飛騨、木曽、赤石の「日本アルプス」は、外国の人たちからも親しまれているのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820663 |