土俵
【どひょう】
相撲の土俵が丸いのは、陰陽五行説が由来!?
いまや外国人横綱が君臨する大相撲だが、土俵ばかりは日本の伝統文化が息づいている。土俵の「俵」は、まさに米俵の「俵」である。昔は米俵一俵を三つに分けて細長い俵にし、それで土俵をつくっていた。その土俵は、四角い土盛りの縁に沿って「角俵」が置かれ、そのなかにつくられた円形の「勝負俵(内俵)」があるというのが基本形だ。勝負俵には、東西南北の四カ所だけ、俵一つ分外側にずらした部分があるが、これはその分だけ土俵が広くなり力士が得をすることから「徳俵」と呼ばれる。もともとは土俵にたまった雨水を掃き出すためにつくられていたものである。ところで、よく考えてみると、プロレスやボクシングのリングは四角いのに、土俵はなぜ丸いのだろう。その昔、室町時代頃までは土俵はなく、方屋(片屋)などと呼ばれる場所で相撲をとっていたようだ。それは、正方形をした形の土地に屋根がついた、簡単な東屋のようなものだったのではないかと考えられている。その屋根の下、自然につくられた丸い人垣の中で相撲をとったというのである。足の裏以外が土につくか、周りの人垣のなかに押し出されたら負けである。やがて、相撲好きの織田信長が、ちゃんとした境界線を設け、江戸時代のはじめ頃からは、俵を境界線に使った土俵になったという。しかし、この頃の土俵は四角もあったようだ。江戸中期には円で統一され、やがてたくさんの見物人に見やすいようにと、現在のような四角い土盛りを築いた上に丸い土俵を置くようになったという。では、なぜ四角のなかの丸なのか。見やすくするためだけなら、円形の土盛りをつくってもいいわけである。そこで出てくるのが陰陽五行説である。相撲は平安時代以前からおこなわれてきた神事であるが、その「神事」の作法の多くは、古代中国伝来の陰陽五行説に基づいて決められている。陰陽五行説では、宇宙は「陽としての天は丸く、陰としての地は正方形」であるとし、正方形と円を使うことはよいこととされている。つまり、土俵は宇宙をあらわすことになっているわけである。行事の軍配には日(陽)と月(陰)が描かれ、勝敗は白星(陽)と黒星(陰)であらわすが、それも陰陽五行説で説明がつく。そのほかにも、土俵の四隅にも、それぞれ陰陽五行説で決められた方位の色が使われている。すなわち、東の青龍(青)、南の朱雀(赤)、西の白虎(白)、北の玄武(黒)の四色である。さらに、吊り屋根は神社建築の代表的な様式で、切妻の屋根に奇数本の鰹木ぎが置かれている。奇数は陰陽五行説では男性をあらわしているので、おそらく土俵は男性のものであり、女性は上がることができないという決まりをあらわしていると考えられる。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820621 |