ドナドナ
【どなどな】
メロディーに込められたユダヤ人の悲哀
「ドナドナドーナー、ドーナー」の悲しげなメロディーが心にしみる「ドナドナ」は、アメリカでフォークの女王といわれた歌手、ジョーン・バエズが「ドンナ・ドンナ」として歌ったことで知られる。一九六四(昭和三九)年に日本でもヒットした。いまでも小学校の音楽の教科書や副読本などに載っている。実はこの曲、「荷馬車に乗せられ、売られていく子牛の悲しい運命」になぞらえて、ナチス・ドイツに追われるユダヤ人の悲哀を歌った歌だという。ユダヤ人は神のことを「アドナイ(主よ)」というが、それをナチスにばれないように「ドナ」と短縮したというのである。そういえば、ジョーン・バエズがこの歌を歌った時期も、ちょうどアメリカがベトナム戦争に本格的に介入し、たくさんの若い兵士が遠いベトナムへと送り込まれていった時期と重なる。屠殺場へ運ばれる何の罪もない子牛に、戦場へ行く若い兵士たちの姿を見たのだろう。原曲はイスラエル系の音楽家ショーロム・セクンダがミュージカルのナンバーとしてつくったもので、作詞はセルドン・セクンダである。日本では、一九六九年に、安井かずみ訳、岸洋子歌の「ドナドナ」がNHKの「みんなのうた」で紹介され、そこから広く知られるようになった。あの「ある晴れた 昼下がり 市場へ続く道……」の歌である。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820620 |