葬式
【そうしき】
葬式のときの白黒の幕の名前は?
葬式のときに使われる、白と黒の幕を「鯨幕」という。葬式と鯨の取り合わせは違和感があるが、語源はズバリその色の取り合わせにある。鯨は、背は黒いが腹は白い。そこから、黒と白にきっちりと分けられた幕の色の取り合わせが鯨を連想させたらしい。また一説には、鯨の肉は、皮が黒いが脂肪は白い。そこから黒白の幕を「鯨幕」と呼んだともいわれている。どちらの説にせよ、鯨幕の語源が鯨にあることは間違いない。ところで、一般的に紅白の幕はおめでたい席、白黒の幕はお葬式などの悲しい行事のための幕といったイメージがあるが、にぎやかな祭りの席で、この鯨幕が張られることもある。たとえば京都府亀岡市千歳町出雲大神宮で毎年四月におこなわれる鎮花祭では、境内にこの鯨幕が張られる。そして、神事のほか、巫女の舞や花踊り、献茶、日本舞踊、神楽などがおこなわれる。悲しみの席で見かける鯨幕と、こうした華やかな神事とではちぐはぐな感じがするが、わざわざ鎮花祭で紅白の幕ではなく鯨幕を張るのは、この行事が宮中でおこなわれる祭礼と同等の格式の高いものであることを示すためである。実は、鯨幕に使われる「黒」は凶事をあらわす色ではない。凶事をあらわす本当の色は、薄墨色(濃い灰色)をさす「鈍色」だ。「黒」は本来は高い格式をあらわす色なのだ。したがって、「黒」が使われている鯨幕は、本当はどんな行事にも使っていい幕なのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820495 |