税金
【ぜいきん】
フランスとスペインの両国に税金を納める国とは
ヨーロッパのフランスとスペインの間に、小さな独立国があるのをご存知だろうか。アンドラ公国という、日本の種子島ほどの面積で人口は六八万人ほどという小さな国だが、れっきとした独立国である。この国は、イベリア半島が北アフリカからやってきたイスラム勢力の支配下にあった八世紀に、フランク王国のカール大帝がこの地をウルヘル伯爵に与えたことに起源をおくといわれる。その後、ウルヘル伯爵からスペインのウルヘル司教へ宗主権は移るが、司教から封土としてこの地を与えられていたフォア伯爵(後のフランス王)との間で統治権をめぐる争いが頻発した。そこで両者は、一二七八年に対等の封建領主権を共有する契約を結び、以後、両者がアンドラの共同領主となった。そのため、フランス大統領とスペインのウルヘル司教の統治体制がその後約七〇〇年続くことになったが、一九八二年、立法と行政が分離されて大規模な政治改革がおこなわれた。そして一九九三年には、アンドラ公国の国会に当たる評議会で憲法が可決され、住民投票でもその独立が承認され、国連にも加盟して、正式に独立国となったのである。しかし、独立国となったいまでも、国家元首はフランス大統領とスペインのウルヘル司教であり、一年ごとに両国に税金を納めている。とはいえ、そんな事情もあり、この小さなアンドラ公国には所得税や物品税はなく、タックスヘイブンとなっている。しかも「ヨーロッパのスーパーマーケット」といわれるくらいの「買い物天国」でもあり、タバコや酒類、香水などブランド商品がかなり安く購入できる。そのため、観光客はなんと年間一〇〇〇万人にも上るという。実は外貨だけで十分に国家財政が成り立っているお金持ちの国なのだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820475 |