サド侯爵
【さどこうしゃく】
サディズム作家は意外にいい人!?
「サディズム」という、他人を精神的、肉体的に痛めつけることで性的快楽を得る性向をあらわす言葉を生むことになったフランスの小説家、マルキ・ド・サド。『悪徳の栄え』『ソドムの百二十日』などのような表現ができるのは、彼自身にその性癖があり、実体験を参考にしたのだろうと想像させる。現実にも彼はその嗜虐の罪によって獄につながれている。一七六八年に起こした「アルクイユ事件」、一七七二年の「マルセイユ事件」のために、生涯の三分の一以上を牢獄で過ごしたといわれる。ところが、おそらく彼のなんらかの体験に基づいての表現に違いないと思える部分が、実はまったくの想像の産物であるから、彼の作品には芸術的価値が認められているのである。実際の彼は、作品のなかのように、嗜虐的行為を毎夜のように繰り返したわけでもないし、快楽を求めるあまりの倒錯の末、ついには殺人に至ってしまうということなどまったくなかったようだ。ただ、サドの結婚相手が家のメンツのためにサドの投獄を王に要請したことや、また獄内で彼がせっせと執筆した物語の内容が、あまりに不道徳、過激に過ぎると危険視されたために、なかなか放免してもらえなかったというのが本当のところのようである。現実のサドは、周囲の人からはとても愛される存在で、逮捕にきた警官ですら彼に敬意を払っていたというのだから、人格を誤解されたままのサドは気の毒ともいえる。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820354 |