米
【こめ】
コシヒカリの品種上の本名は、「農林一〇〇号」
海外赴任や旅行など、日本を離れていちばん恋しくなるのは、やはり日本の米ではないだろうか。日本の米市場の筆頭銘柄といえば「コシヒカリ」と「ササニシキ」。これらならば、おかずがなくても食べられるという人もいるだろう。コシヒカリやササニシキには、一般に流通するときの名前とは別に、品種上の名前が付いている。コシヒカリが「農林一〇〇号」で、ササニシキが「農林一五〇号」だ。一〇〇号、一五〇号というからには、一号もあるのかといえば、「農林一号」も、もちろんある。農林一号は、山形県で小作人をしていた阿部亀治が明治二六年に創選し、現在の良食味品種の元祖といわれる「亀ノ尾」の孫にあたる。そして、この農林一号は、実はコシヒカリのお父さんなのである。コシヒカリもササニシキも、掛け合わせの品種改良によってでき上がった米だ。コシヒカリは、おいしくてとれ高も多いが、いもち病に弱い農林一号と、いもち病に強くて品質がよい農林二二号を掛け合わせた米で、味がよいうえに栽培適地が広く、耐寒性が高いなど、長所ばかりを集めてでき上がった優等生だ。ササニシキも東北の名米「ササシグレ(東北五四号)」と、コシヒカリと同じく農林一号と農林二二号を親とする「ハツニシキ(奥羽二二四号)」の掛け合わせだ。どちらも日本を代表するブランド米となった。ちなみに、コシヒカリに奥羽二九二号を掛け合わせたのが「あきたこまち」である。本来、こういった品種改良は、その土地の気候や土壌に合わせ、病気に強く、寒さに耐えられるようにといった目的でおこなっている。よりおいしい米をつくろうとする努力の結晶が、新種の米というわけだ。現在では、年間約二〇種類もの新種ができているが、実際に新種が誕生するまでには、一〇年以上の年月をかけるのが普通である。また、おいしい米をつくるだけでは、なかなか売れなかったりもする。そこで、米のイメージにピッタリの「名称」を付けてあげるわけだ。最近では、宮城県の「ひとめぼれ」のように、名称を公募するケースも増えている。コシヒカリやササニシキがブランド米に育った背景には、やはりネーミングのよさがあっただろう。パッケージに印刷されたネーミングが「農林一〇〇号」では、どんなにおいしいお米でも、消費者はなかなか手を出すまい。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820325 |