紙
【かみ】
何回折っても同じ比率のA判、江戸時代に起源を持つB判
中国で発明された紙の製法は、日本へは聖徳太子の時代に伝わり、ヨーロッパへはそれより遅れて伝えられている。貴重品だった紙だけに、中国では製法は秘密にされ、少しずつ技術が伝わったせいか、それぞれの地で独特の紙が誕生している。日本では、和紙と呼ばれているものにその伝統が生きている。製紙技術が世界の共有財産となった現在も、和紙時代の伝統が生きているのがB判という紙のサイズである。現在の紙のサイズの世界規格は、A判と呼ばれる。この判は、縦横の辺の長さの比率が1対ルート2と決まっていて、二つ折りにしても同じ比率になる。二回だけでなく、何回折っても縦横の辺の比率が変化しない。ドイツ人科学者オストヴァルトが提案した規格で、これなら二つ折りにして裁断したとしても、紙はどれも同じサイズになる。綴じたり製本したりするために紙を裁断しても、サイズをそろえるためのムダな切れ端が出ないのである。一方、日本のB判は、江戸時代に公文書用紙に使われていた美濃紙のサイズ。その歴史を踏まえて、役所がこだわって書類用紙に使うサイズだったが、近年は役所もA判で統一されつつあるという。おもしろいことに、この美濃紙もやはり縦横の比率が1対ルート2なのだ。美濃紙の紙すき職人に高等数学の知識があったかどうかは定かではないが、生活のなかから発見した知恵だったのかもしれない。A判とB判の差は、基本となる全紙(0判)の面積が、A判は一平方メートル、B判が一・五平方メートルという違いだけである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820184 |