イルカ①
【いるか】
イルカの社会は愛情深くもなく、メスには暴力的なところもある!?
その愛くるしい様子から、イルカは多くの人に愛されている。そして、イルカはとても高い知能を持つという研究者も多い。しかし、彼らは確かに利口であるけれども、実は多くの人が思っているように愛情深くはないし、ユートピア社会をつくっているわけでもないようだ。バンドウイルカはオスどうしが複雑で巧妙な同盟を結ぶことがわかっているが、これは遊びのためではない。なんとオスは、対抗グループから排卵期に近い繁殖力のあるメスを略奪するために、仲間と共謀するようなのである。オスは交尾できる相手の数が少ないと攻撃的になる。二頭、あるいは三頭のオスだけのグループは、同じようにオスだけのグループを捜して、胸ひれで触ったり、口で軽くつっついたりして、メスを奪うたくらみに参加するように誘うのだという。そして、二つのグループはメスのいる第三のグループを襲って追跡し、攻撃するのである。おもしろいのは、メスを奪い取った時点で同盟は解消され、オスたちはそれぞれ最初のグループに戻り、メスはこのグループのものとなることだ。メスを奪い取ることに成功した後もオスどうしは密接な連携を保ち、メスが逃げないように鮮やかだが威圧的な芸当をやってみせる。二?三頭のオスがメスを取り囲み、いっせいに跳び上がったり飛び込みをしたりするのだ。しかし、なおメスが逃げようとすると、オスは後を追って?み付いたり、ひれで打ったり体当たりをしたりするというから、およそかわいいイルカのイメージとはかけ離れたものであるといえなくもない。おまけに、つかまえたメスに対してオスは非常に横暴で支配的。「ポン」という音を出してメスを呼ぶが、来ないときには、オスはおどしたり攻撃するのだという。しかし、メスが子を産むとオスは興味を示さなくなり、メスはシングルマザーとして四?五年の間、独りで子育てをしなくてはいけない。イルカのメスにとっては、なかなか厳しい社会であるが、メスを奪うまでのオスイルカの連携は人間顔負けの頭の良さである。なお、イルカの体の大きさに対する脳の大きさの比率は、動物のなかでも最大級という。一見これがイルカの知能が高いことに関係していると思われそうであるが、脳が大きいというだけで知能が高いとはいえない。なぜなら、体に対する脳の比率がいちばん大きいのは、なんと羊だからである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820059 |