池
【いけ】
およそ七年ごとに出現する幻の池
周囲二八〇メートル、最大水深三メートルという池でありながら、どんなに縮尺率の低い地図にも掲載されないという池がある。それが静岡県浜松市の水みさ窪くぼ町にある「幻の池」だ。地図に載らないのも当然、この池はおよそ七年に一度、ほんの数日だけ顔を見せる、いわば巨大な水たまりみたいなものだからだ。水窪町は、JR飯田線沿いの町だが、出現するのは町の中心地から離れた標高六五〇メートル地点という山中である。池が出現するとき、ドーンと爆音のような音をともなうというが、実際に耳にした人は少なく、それらしい音だとわかっても確認に行くには時間のかかる場所だ。当然、池がどうやってできるのかを見た人はいない。普段は杉林のなかの「池の平」と呼ばれている窪地で、音がしたような気がするというので行ってみたら、もう池ができていたというのがこれまでの例である。科学的には、夏に表土が草に覆われ、地表の保水力が高まった結果ではないかといわれている。大雨の後、保たれていた水が少しずつ窪地に流れ込み、池のようになるというわけだ。しかし、じわじわ集まるのなら爆音はしないはずだし、池の出現するのがおよそ七年ごとという周期性を持つため、不思議感を募らせる。周期を見ると、近年だけでも一九七五(昭和五〇)年八月二六日、一九八二(昭和五七)年八月一一日、一九八九(平成元)年九月八日と規則正しい。その後は一九九八(平成一〇)年一〇月二日と周期ものびれば日付も遅れ気味だ。さらにその後は、二〇〇六(平成一八)年まで、幻の池の出現は確認されていない。また周期がのびているだけなのか、それとも地球温暖化の影響で伝説だけの本当の幻になってしまうのか?
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820037 |