アリ
【あり】
働きアリの二割は、実は働かない怠け者
暑い夏の間、せっせと、わき目もふらずに行列をつくってエサを運ぶアリ。その勤勉さには頭が下がるが、よくよく見ると、エサを運びもせずに、仲間の周りをうろうろしているだけのアリもいる。そこで、働かないアリはいるのかという実験をした人がいる。北海道大学大学院農学研究院の長谷川英祐氏のグループだ。彼らが、カドフシアリ約三〇匹ずつの三つのコロニー(血縁集団)を五カ月間にわたり観察した。すると、約二割のアリは、怠けて働こうとしなかったというのである。仲間の周りを歩いて、さも働いているようには見えるが、労働とは無縁だった。働くことが代名詞のようなアリなのに、そんな集団のなかにも、必ずサボるヤツがいたのである。アリの集団を勤勉さの度合いで分けると、前述のように、働かないアリが二割、普通に働いているアリが六割、働かないアリの分の埋め合わせをするように、よく働くアリが二割だったという。おもしろいのは、このような働き度別の割合は、集団が違っても、だいたい同じになる点だ。たとえば、よく働いているアリだけを集めてきて集団にすると、最強軍団ができそうなものだが、そのうちやっぱり働かないアリが二割ほど出てくるようなのだ。反対に、サボっているアリだけを集めてみると、みながサボって集団の存続の危機が起こるのではないかと思いきや、そのなかから奮起するアリが二割ほど出てくる。このことから、集団のなかの働かないアリは、「働かないこと」で、その存在意義があるのではないかといった見解もある。ちなみに、大阪府立大学の研究でも、よく働くアリだけでなく、働きの悪いアリなどが入った混合集団のほうが、エサの回収率がよいという結果になったという。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820023 |