タツノオトシゴ
【東京雑学研究会編】
§オスが子どもを産む生き物がいた!
タツノオトシゴといえば、全長八~一〇センチほどの生き物で、細長い吻の先に口があり、海の中のプランクトンや小魚を食べて生きている。
さて顔の部分をよく見ると、どことなく馬を想像させる。その姿からか、ウマウオあるいはウミウオという呼びかたをする地方もある。そんなゴツゴツしたイメージにもかかわらず、安産のお守りとしての役割もはたしている不思議な生き物である。
タツノオトシゴの繁殖法を調べると、またこれが非常に不思議である。まず、出産はメスではなくオスがする。タツノオトシゴは、オスに育児嚢という赤ちゃんを育てる袋がついているのだ。
そこへ、求愛行動を終えたメスが卵を生むのである。メスが産み落とす卵の数はとても多く、一度に数百個という数の卵をオスの育児嚢へ産むのである。
やがて、卵は受精卵となり、あとは育児嚢の中でタツノオトシゴの形になるまで大切に育てられるのである。
出産前のタツノオトシゴは、育児嚢がちょうど風船のように膨らんでいるため、ひとめで見わけることができる。
さて、いよいよ出産だ。出産は、卵が孵化し始めた頃、お腹を岩などにすりつけながらタツノオトシゴの赤ちゃんをつぎからつぎへと外へ出すというわけだ。
このように、出産が楽に行われることにちなんで、タツノオトシゴが安産のお守りとして役割をはたすことになったのだろう。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670582 |