消しゴム
【東京雑学研究会編】
§消しゴムはなぜ消えるの?
「肉を斬らせて骨を断つ」というのが剣の道の極意なら、消しゴムはまさにそれにぴったりの「達人」だ。なにしろわが身を削って相手を消そうというのだから。ただ、消しゴムとはいいながら、近年はプラスチック素材の、いわゆるプラ消しが主流である。それに、ゴム製にしろプラスチック製にしろ、消せるのは鉛筆で書いたものだけだ。
もともと鉛筆というのは、芯が黒鉛でできている。鉛筆で紙に文字や絵を書くというのは、この黒鉛の細かい粒を紙の表面にくっつけたり、紙の繊維にからみつかせたりすることだ。
消しゴムは、この黒鉛の粒を紙から吸着する働きをしている。だから、理屈の上では、鉛筆の文字の上を消しゴムでトントンたたくだけでも、黒鉛の粒が消しゴムに移動して文字は消えることになる。
ただ、いったん黒鉛の粒を吸着した部分は、それ以上の粒を吸着しにくくなる。そこで紙に軽くこすりつけると、吸着して黒ずんだ部分が削れて消しカスとなり、消しゴムの新しい面が現れる。するとその面がまた黒鉛の粒を吸着する。また、こすることによって、紙の繊維にまでからみついた黒鉛の粒もかき出されやすくなる。
こうして、消しカスを出しながら、消しゴムは鉛筆で書かれた文字や絵を消し、紙をもとの状態に戻しているのである。
プラスチック製消しゴムは一九五〇年代に子ども用に作られたおもちゃのビニール消しゴムが改良されたもので、七〇年代になってさらに性能の向上からプラスチック製が中心になっていったものだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670298 |