ケチ
【東京雑学研究会編】
§ケチだったおかげで美術用語に名前が残ったシルエット大臣
「シルエット」とは、影絵、または洋服や肉体などの輪郭線のことをいう。この「シルエット」という言葉は、一八世紀のフランス、ルイ一五世の時代に財務長官を務めた人物の名前だ。当時のフランス宮廷の財政は、日に日に困窮をきわめていった。オーストリアなどと相次いで戦火を交えていたため、国家予算の大部分を軍事費に費やしていたからである。
その困窮を救うために登用されたのが、エティエンヌ・ド・シルエット。シルエットは財政を立て直すために、これ以上はできないというほどの緊縮政策を実施した。国の金庫を救うために、これまで非課税だった特権階級の人々からも徴税しようとするが、高等法院がこれを拒絶して道は閉ざされてしまったのだ。やむなく彼は、あれこれ強引に、税金の対象になりそうなものを見つけては課税を計画した。それが最終的には「人の吸う息にまで税金をかける」とまで言われるようになったのだ。
こうした課税計画は、結局失敗に終わり、シルエットは辞任に追い込まれていくことになる。
ある日のこと、大臣の恒例に従い、シルエットも肖像画を描かせることになった。このとき、金融政策に苦心してきた彼は「肖像画を描かせるなんて費用がもったいない。どうしてもというのなら黒い影だけで十分だ」といい、輪郭にそって、中を黒絵具で塗りつぶした肖像画ですませてしまった。このエピソードから、輪郭だけを描き、中を黒く塗りつぶした絵のことを彼の名前をとって「シルエット」と呼ぶようになった。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670300 |