食材基礎知識
イタリア食材と原産地表示
イタリア料理の基本は、素材を活かすことと、郷土の味を大切にすることにある。それだけに、食材そのものに対するこだわりも深く、品質を守る努力が続けられている。その一つに、特定の産地で生産・加工される食材を保護し、保証するという原産地表示の制度がある。
1.原産地表示
イタリアには、食品の原産地と品質を保証する3種類の表示=DOP、IGP、STGがある。対象となるのは、オリーブオイル、チーズ、食肉加工品、野菜・果物・穀物、ベーカリー製品、ワインなど。DOPをはじめ3種類のうちの一つを表示できる食品は現在約180種類ある。
■DOP(保護原産地呼称)
Denominazione di Origine Protetta(デノミナツィオーネディオ リージネプロテッタ)の略。原料から製品化まで特定の生産地内で生産、加工され、規定された製法に沿っているもの。
■IGP(保護地理表示)
Indicazione Geografi ca Protetta(インディカッツィオーネ ジェオグラーフィカプロテッタ)の略。品質や特徴が特定の地域に由来し、製造、加工、包装のうちいずれか一つの段階が同地域内で行われているもの。
■STG(伝統的特産品保証)
Specialita Tradizionale Garantina(スペシャリータ トラディチョナーレ ガランティーナ)の略。地域に規定はないが、製法の伝統的な生産方法やレシピに沿っているもの。
※ただし、これはあまり意味がないとする向きもある。
2.原産地表示の対象となっている主なイタリア食材
○オリーブ
南部を中心に、イタリア各地で生産されている。地域による味の違いもみられ、たとえば南部のカンパーニャ州はかすかな甘みを感じる心地よい口当たり、中部のトスカーナはフルーティーな香りとコクのある…など、特徴に傾向があるといわれる。また法律によって3クラスに格付けされ、上位から①ヴァージン・オリーブオイル(化学処理を行わないため特有の色や香り、味わいを持つ)、②リファインド・オリーブオイル(化学的に精製したもの)、③オリーブオイル(①、②のブレンド)に分類されている。
○チーズ
北部のチーズは牛乳から、中・南部は羊乳から造られる傾向がみられる。イタリアチーズの王様といわれる「パルミジャーノ・レッジャーノ」(エミリア=ロマーニャ州/ロンバルディア州)は代表格。
○食肉加工品
生ハムやサラミなど、塩漬けと熟成による豚肉の保存食品。イタリア語でサルーミsalumiといわれる。パルマ産プロシュット(エミリア=ロマーニャ州)は特に有名。
○野菜・果物
バッサーノ産ホワイトアスパラガス(ヴェネト州)、ジェノヴァ産バジリコ(リグーリア州)、アグロ・サルネーゼ・ノチェリーノ産サンマルツァーノ・トマト(カンパーニャ州)をはじめ、特定産地名のついた栗や小タマネギ、リンゴ、ヘーゼルナッツなど多彩な食品が認定を受けている。
○その他
パンや米、バルサミコ酢、ハチミツ、ミラノ風リゾットなどに欠かせないサフラン、ワインなど。
| 東京書籍 (著:岸 朝子) 「イタリアン手帳」 JLogosID : 8541168 |