あかがい(たま)
貝類の握りダネの最高峰にして、江戸前の高級すしダネの一つ。冬、特に春先の産卵を控えた2月?3月が最高の食べごろ。潮っ気にほんのわずか血の気が混じった特有の香りを生かすため、酢で締めずに生のまま握るのが普通だ。一方であかがいの「好き」「嫌い」がはっきり二分されるのも、この香りがあればこそ。
いわゆる「あかがい」は貝の足の部分。これを「たま」といい、外套膜の「ひも」と区別する。「たま」か「ひも」か、こちらも好みの分かれるところ。姿はもちろん、味も噛みごたえもまるで違い、これが同じ貝の身か、とさえ思わせる。そんなワケだから、両方いっぺんに食べるのが一番です。
赤い血ゆえの独特の味
内海や湾内の浅い泥底に棲み、低酸素などの悪条件にも強い。数ある産地のうちでも閖上(宮城県名取市の名取川河口に位置する地域)のものを最上とする。かつては東京湾でも良質のアカガイがよく獲れたという。
身が赤いのは、ヘモシアニン系血液を持つ普通の貝類と違って、哺乳類と同じヘモグロビン系の血液だから。アカガイ特有のかすかな金っ気は、このヘモグロビン系血液のためだ。
| 東京書籍 (著:坂本一男) 「すし手帳」 JLogosID : 8003068 |