【すし手帳】貝 >
めがいあわび


地方名でクロアワビを「おん」、メガイアワビを「めん」と呼ぶ。これはかつて、クロアワビが雄、メガイアワビはその雌と考えられていたからだ。殻が平たくて丸いメガイアワビが雌に思えても、確かに不思議はなさそう。両種は別種で、それぞれ雌雄がある。
メガイアワビも蒸し鮑向き。だからマダカアワビと同じ手順を踏む(写真は長崎県産)。歯をそっと包み込むような噛み心地の身は、はんなりした甘さの奥に潮の香をわずかに含む。肝や煮つめとも引き立て合って、のどに流すのが惜しいほどだ。複雑かつ玄妙、これこそ舌を虜にする禁断の味か。
![]() | 東京書籍 (著:坂本一男) 「すし手帳」 JLogosID : 8003067 |