【すし手帳】赤身 >
初がつお


春から夏、日本列島の太平洋側を北上する群を上りガツオ、夏から秋に南下する群を下りガツオ(戻りガツオ)と称し、下りガツオのほうが脂がのっている。にもかかわらず「旬は春」とするのは、旬の文化的側面─江戸っ子が女房を質に入れてでも食べたがったり、青葉やホトトギスと並び称されたり─を示す好例といえよう。
さて、その初がつお。脂こそ少ないものの、澄んだ赤身はいわば血気をはらんでみずみずしく、さわやかな香りとともに若さが匂い立つようだ。この「若さ」をよしとするゆえに、下りガツオは握らないすし店も多い。
![]() | 東京書籍 (著:坂本一男) 「すし手帳」 JLogosID : 8003043 |